2006年7月1日

残存デンプン分析用の試料採取:土器編

前々回の記事(6/6参照)において、石器から残存デンプン分析用試料を採取する方法を取り上げました。 今回は土器に付着した炭化物からの試料採取を取り上げます。

『Ancient Starch Research』(R. Torrence & H. Barton編)で「土器の付着物からどのように試料を採取するのか」を探してみたところ、滅菌水を土器の表面に数滴含ませ、表面の残留物とともに吸い取る方法と、残留物自体を手術用のメスで小さい範囲(3-5mm)を採る方法が述べられていました(198頁)。


実際に二つの方法で試料を採取して分析を行ったA.Crowtherの研究では、ラピタ土器の付着物からタロイモ(Colocasia esculenta)のデンプン粒を検出しています。

  • Crowther, A. 2005. Starch residues on undecorated Lapita pottery from Anir, New Ireland. Archaeology in Oceania 40: 62-66.

問題は、これらの方法によって、日本の考古遺跡からしばしば出土する土器付着炭化物の残存デンプン分析が行えるのかどうかです。

土器付着炭化物にはいろいろな種類があります。土器に残っているふきこぼれやこげつきの痕跡、炭化した種実などです。炭化した種実は種実の形から同定することが可能ですが、ふきこぼれやこげつきは調理された後の状態ですので、形状からはそれらが何か判断することは困難です。

では、残存デンプン分析がこれらの同定に対して有力な方法となりえるのか。

調理後の状態ということは、調理の内容物が植物であれば、そのデンプンが加熱を受けて糊化している、つまり、デンプンの粒子が崩壊して溶解している可能性は大きいです。こうなってしまうと、同定は非常に困難です。

したがって、残存デンプン分析によって土器付着炭化物が同定できるのかどうかは、その炭化物がどういう状態にあるのかに左右されます。

そこで現在、実験的ではありますが、縄文時代の遺跡から出土した土器付着炭化物から試料を、滅菌水で吸い取って試料を採取する方法と炭化物そのものを微量採取する方法によって採取し、顕微鏡観察を行っています。

結果はまだ出ておりませんが、これと合わせる形で、調理実験による土器の付着物から残存デンプン粒が検出できるのかどうか、デンプン粒が同定できるのかどうかを今後見ていきたいと考えています。

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