作物の脱穀・精製モデル2

エンゲルマークのモデル(1989)

エンゲルマークは、有史時代のヨーロッパ北部における軽微な違いを示すことにより、スウェーデン北部のフェノスカンディアにおける大麦とライ麦の脱穀・精製モデルを作り上げました。彼のモデルは脱穀、粗いふるい分け、籾摺り、細かいふるい分け/選別、収蔵庫出の保管という過程を示しています。

彼は、植物遺体は人間や動物が使用するために生産物を保管することや集落遺跡内で生産物が分布することを示していると主張しています(Englemark 1989: 187)。

  • Engelmark, R. 1989. Weed-seeds in archaeological deposits models, experiments and interpretations. In T.B. Larsson and H. Lundmark (eds.) Approaches to Swedish prehistory: a spectrum of problems and perspectives in contemporary research. BAR International Series 500: 179-187.




レディのモデル (1997, 2003)
レディは、インドのグジャラートやアンドラパラディシュのインダス・ヴァレー・トラディションの後期ハラッパー遺跡において、作物の脱穀・精製モデルの発展が先史民族植物学的な復元に役立つことに注目して、民族考古学的な研究成果を示しています。
彼女は2つの作物タイプ、冬期キビPanicum miliareと夏期キビSorgham bicolorPennisetum typhoidesの脱穀・精製過程を示しています。このモデルは収穫、脱穀、風による選別、ふるい分け、振動による選別、籾すり、製粉からなっています(Reddy1997:169)。
レディは、種実の形態は脱穀・精製方法の選択や収穫の選択を行う上で主要な役割をはたし、それが雑草混入の結果や副産物を除外する回数、各段階における選別の回数に影響すると主張します(Reddy 2003: 54)。

  • Reddy, S.N. 1997. If the threshing floor could talk: integration of agriculture and pastoralism during the late Harappan in Gujarat, India. Journal of Anthropological Archaeology 16: 162-187.
  • Reddy, S.N. 2003. Discerning palates of the past: an ethnoarchaeological study of crop cultivation and plant usage in India. Michigan: International Monographs in prehistory. Ethnoarchaeological Series 5. 18-54.


スティーブンスのモデル (2003)
スティーブンスは、イングランド南部の遺跡から出土した植物考古学資料を用いて、農産物の生産者と消費者を区別するため、ヒルマン(1981a)とM.Jones(1985)による二つの先行モデルを応用しています。
彼は多くの炭化した植物考古資料が特定の脱穀・精製作業に関係しているというよりもむしろ、年間通じて保存されていた作物を日常的に精製することによって生み出される廃棄物の方に起因していると言っています(Stevens 2003: 6)。
皮麦についてのスティーブンスのモデルは脱穀、かき集め、第一次選別、粗いふるい分け、細かいふるい分けと籾すり、手動選別からなっています。このモデルは植物考古資料や他の考古資料による農業の社会的構造を見る可能性を示しており、生産と消費がそれぞれ単独で存在するのではなく、多くのパーツから成り立って結果を生み出し、両者は混じり合って存在していることをも示しています(Stevens 2003: 73)。
  • Stevens, C.J. 2003. An investigation of agricultural consumption and production models for prehistoric and Roman Britain. Environmental Archaeology 8: 61-76.

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