噴火湾縄文プロジェクト

8月22日から29日,伊達市噴火湾文化研究所で行われた噴火湾縄文プロジェクト「北海道噴火湾沿岸の縄文文化の基礎的研究」(科学研究費助成事業基盤研究(B),課題番号26284125)の夏の調査に参加しました。今夏,伊達市の若生貝塚で発掘調査を行っていました。23日は研究方針について議論を行いました。







24日に,若生貝塚の発掘調査地点を見学しました。写真の中央部が発掘調査区です。


若生貝塚貝塚は峰山巌氏や竹田輝雄氏,ほかの研究者たちによって1950~1952年に発掘調査が行われました。






今回の調査結果により,峰山トレンチ(左の写真参照)を確認しました。さらに,縄文時代早期,前期の海藻が非常に厚いことが判りました(右の写真参照)。貝層からは擦石が検出され,うち1点について残存デンプン粒分析用の試料を採取しました。


遺跡の近くには湧水地があり,その水は遺跡が営まれていた間,遺跡に供給されていました。今でもこの水の供給量は豊かです。若生貝塚は牧場の隣にあり,この牧場も遺跡の一部に該当します。牧場の付近ではいくつかの擦石類を表採しました。


25日から28日は,北黄金貝塚の擦石から残存デンプン粒分析用の試料を採取しました。北黄金貝塚は共同研究における重要な遺跡の1つです。2011年以来,私は石皿や擦石の分析を行ってきました。今回は上條信彦氏とともにこれらの石器を検討することになりました。

実際の所,今夏の若生貝塚の調査では数点の擦石が出土したのみでしたので,噴火湾沿岸における分析の方針を立てる必要が出てきました。結果として,26日に函館市で別の縄文遺跡を見学することとなりました。

26日,私たちは函館市垣ノ島B遺跡と大船遺跡へ行きました。今回の訪問中,1980年代の八木プロジェクトで発掘された出土遺物を実見することができました。八木プロジェクトはG. W. クロフォード氏と他の研究者たちが北海道で行ったプロジェクトであり(八木は縄文遺跡の名前です),水洗選別法などの大型植物遺体の分析調査が行われました。彼らの研究成果は日本の植物考古学の基礎の一部分を形作っています。



垣ノ島B遺跡の発掘調査も見学しました。可能であれば, 来年この遺跡から出土した石皿や擦石類の試料を採取できることになっています。

調査の説明をお聞きした後,大船遺跡の史跡公園へ向かいました。この遺跡からは多くの石皿や擦石類が出土していますが,ほとんどが野ざらしで保管されていました。そのため,これらの出土石器は分析に適していないことが判明しました。


27・28日は,北黄金貝塚の石器から試料を採取しました。現在,私は合計70点以上の石器から試料を採取したことになります。はたして,今回は前回の分析よりも良好な遺存状態のデンプン粒を検出することができるのでしょうか?

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