インド―太平洋先史学連盟第20回大会(The 20th Congress of the Indo-Pacific Prehistory Association,IPPA)に参加し,研究報告を行ってきました。参加日程は下記のとおりです。
1月15日(水) 移動
1月16日(木)
午前:#42「Grinding stone(s): technology, function and distributions」で発表
午後:#39「Understanding the Early Societies: Interpretation of Archaeological Data from Vietnam and Southeast Asia」に参加
1月17日(金)
午前:#20「Beyond Subsistence: Food and Foodways in Indo-Pacific Archaeology」に参加
午後:#20と#63「General Session D」に参加
夜:閉会式,ディナー
夜:閉会式,ディナー
1月18日(土) アンコール・ワット,アンコール・トム ,タ・プローム,アンコール国立博物館の見学,移動
1月19日(日) 帰国
16日(木)に行われ,今回発表を行ったセッション42は,石皿や磨石類に焦点を当てたものです。オーガナイザーのRichard Fullagar先生とLi Liu先生は,石器と残存デンプン粒分析の研究者です。そのため構成メンバーの発表の大半が残存デンプン粒分析の成果を報告しました。
私は今回,「Human Exploitation of Plant Food Resources in Prehistoric Japan: Evidence from Starch Granules on Ground Stone Tools」と題し,これまでの10年間進めてきた日本の残存デンプン粒分析の研究成果を報告しました。
発表の終了後には,Fullagar先生とLiu先生,Ebbe Hayesさん(セッションメンバーでFullagar先生の学生),Carol Lentferさん(研究仲間)から,日本の成果は非常に興味深いこと,もっと積極的に発信する必要があることなど,さまざまな助言をいただきました。
このセッションでは各国から残存デンプン粒分析の成果が報告されました。以下は,彼らの報告を聞いた感想です。
- オーストラリア,ヨーロッパ,アメリカでは,発掘調査の時点から残存デンプン粒分析が調査手法の1つとして取り入れられている。そのため,出土後から分析に至るまでの資料の取り扱い,コンタミネーションがどこで起こるのかをたどることが容易である。
- 植物種の同定方法については,それぞれの標本データを用いて形態分類を行った上で,同定が実施されている。ただし,種の判定基準については,オーストラリアグループ,中国グループのように,研究者グループごとに異なっており,この分野の研究が発展するための次の段階として,同定基準を共有化する必要があるのではないか。
- どの発表においても,どの植物種のデンプン粒が遺跡の中で多く検出されたのか,そこから当該遺跡においてどの植物が多く利用されていたのかという報告は行われたが,石器の器種ごとの残存デンプン粒の検出状況についてはほとんど触れられなかった。器種ごとの残存デンプン粒の検出結果を提示することは,石器の用途を考えること,遺跡全体における植物の利用状況を復元することにつながるため,この視点を示すことは必要ではないか。
参加したセッションのうち,#20「Beyond Subsistence: Food and Foodways in Indo-Pacific Archaeology」は,生業,食,食生活をキーワードとして,民族考古学,土器と食料残滓,食生活,植物考古学,動物考古学,骨考古学,社会考古学の7パートに分かれた大規模セッションでした。
どのトピックも非常に興味深く,各分野の最先端の成果を知ることができ,大きな刺激を受けました。このような大規模セッションが,近く日本で開催される国際会議で行われればいいなと思いました。
17日(金)は,すべての発表セッションが終了した後に閉会式とディナーが行われました。ディナーでは,カンボジアの民族舞踊「アプサラダンス」などが行われ,初めて食べたカンボジア料理とともに最終日の夜を楽しみました。
今回の学会は40か国の研究者が参加していたようで,日本からは30名を超える研究者が参加・発表していたそうです。日本を含め,ふだんはお会いする機会のない方がたや研究仲間とさまざまな議論を行うことができ,私の研究への助言もたくさんいただきました。
学会発表やセッションの参加報告は以上です。別の記事で,見学した遺跡群と博物館について掲載します。
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