2013年6月23日

IWGP2013参加記録

6月16~20日,the 16th Conference of the International Workgroup for Palaeoethnobotany (IWGP)に参加してきました。

6月15日:トランジットのためウィーン滞在
6月16~20日:学会参加
6月20日:ギリシアの水田とコムギ畑の調査
6月21~22日:帰国 

1.学会の概要

おおよそ36か国(ほとんどはヨーロッパか?)から多くの植物考古学者がこの学会に参加していました。

学会の間,プログラムは休憩や昼食の時間を含んで,9時から20時まで行われました。実際の所,このスケジュールは参加者にとって非常に疲れるものでしたが,同じ1つの会場ですべての報告をみんなで聞くことができる形式でした。

トピックは栽培化,農耕,農耕の起源などが主流でした。これらのトピックでは主に穀物(コムギ,オオムギ,ライムギ,アワ,キビ,イネ),マメ類,野菜,種実類が扱われました。またこれらのフィールドは主にヨーロッパ,アメリカ,アフリカ,南アジア,西アジア,そして東アジア(中国と日本のみ,朝鮮半島はなし)となっていました。

2.口頭発表(6月19日,18:00~20:00) 

私は「Overseas plant exchanges in East Asia: From prehistory to protohistory」のセッションで「Diversity of Plant Food Resources Used at Habitation Sites in Prehistoric Japan: Evidence from Macrobotanical Remains and Starch Granules」と題して報告しました。ちなみに,セッションメンバーは私を入れて4人です。

英語要旨は下記のとおりです。
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Human interaction with plant resources in the Palaeolithic (37,000-11,000 years BP) and Jomon periods (11,000-2,900 years BP), Japan, has been clarified during the last decade. The people in those periods were not plain hunter-gatherers, and did use various plant resources around settlements. Plant food processing is fundamental as one of human subsistence strategy. In order to recover plant food consumption of hunting-gathering populations in prehistoric Japan, this paper employed macrobotanical analysis of sediment samples and starch residue analysis of stone tools and potteries from habitation sites in northern, central, and southern areas. Macrobotanical remains mainly show the presence of nuts (Castanea, Aesculus, and Fagus), acorns (Castanopsis, Lithocarpus, and Quercus), bulbs (Lilium, Allium, and others), and beans (Phaseolus and Glycine). Microbotanical results confirm the widespread use of nuts and acorns at all sites, along with bulbs and tubers (Pteridium and others). These integrated results present the comprehensive archaeobotanical evidence of the diversity of plants cultivated or exchanged, processed, and consumed, by hunter-gatherers before rice cultivation in Japan. 
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3.今回の成果の概要 

私たちのセッションの最大の成果は日本の研究者が最新の日本の植物考古学に関する研究結果を日本以外の植物考古学者たちに対して報告したこと,そして多くの研究者が私たちの報告を聞くためにセッションに参加してくれたことです。これらは私たち,あるいはすべての日本の研究者にとって大変素晴らしいことではないかと思います。

日本では多くの植物考古学の研究が行われており,これらの多くの成果によって,先史時代における植物資源と人間の関係が,特にこの10年ほどの間に,日本や近隣の地域で解明されてきています。しかしながら,今回の学会の参加者の大半は,私たちセッションメンバーをのぞいて,日本考古学のトピックについて何ら触れられることはありませんでした。

何人かの参加者たちと話して感じた私自身の印象ですが,多くの日本以外の研究者たちは日本で行われている最新の研究情報を得たいと強く要望しています。しかし,たとえ英文要旨があったとしても,彼らは日本語の論文を十分に読むことができないと言います。

実際のところ,多くの日本の研究者が自分たちの研究成果を国際学会で報告し,国際雑誌に英語論文を投稿していますが,これらは日本以外の研究者たちが十分な情報を得られるところまで至っていないようです。

セッションの後,改めてこの状況を強く認識しました。

また今回の学会では,多くの植物考古学研究において,植物珪酸体や花粉の分析と同様に,残存デンプン粒分析が過去の人間活動を復元するための1つの方法として確立されていることをとても痛感しました。

日本の学会ではどこでも,残存デンプン粒分析の成果を報告するのは私や私の仲間たちだけです。今回の学会では,多くの研究者が植物珪酸体や花粉とともに遺物等から検出された残存デンプン粒を提示していました。彼らの方法論は,いくつかの残存デンプン粒分析の論文とは異なって,植物同定に関しては特に問題はなく,汚染の問題も解決されていました。

もちろん,日本の研究状況は他国の状況とは大きく異なります。しかし,日本考古学において早急に残存デンプン粒分析の方法を確立させることが必要ではないかと感じました。

IWGPでは非常に多くの成果を得ることができました。この機会を与えていただいた細谷葵氏,田中克典氏,佐藤洋一郎先生に厚く御礼申し上げます。

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